吉田 徹 氏より(3/28)
吉田 徹 氏より(3/28)
きのこ研究会会員の皆様へ
会報いっぽん28号に小生が掲載した記事の訂正です。
奇妙なマツタケ
川越市 吉田 徹
はじめに
日本人はキノコといえばマツタケというほどマツタケを好む人種である。そして、マツタケは秋に松林に生えるキノコと信じ、夏にコナラ林など広葉樹林に発生するマツタケについては、一般には知られていない。日本のマツタケのルーツである中国・雲南省産のマツタケが、松林でなく広葉樹林に生えると知ると皆驚く。
日本ではマツタケ以外にバカマツタケ、ニセマツタケ、シロマツタケなどがある。そのうち日本固有種であるバカマツタケは、味も香りもマツタケに劣らない優れたキノコである。バカマツタケの人工栽培も試みられたが、成功例は知らない。全国各地にバカマツタケの愛好者がいるのを知ったのは最近である。
きのこ党への誘惑
3年前、新進気鋭の若手研究者が英国留学から帰国し、理化学研究所(以下、理研と略称)に復職した。研究者F氏は、故・理研きのこ党創始者の子息できのこ愛好者である。
道端のきのこに熱中するきのこ狂(理研きのこ党OB)にとっては、F氏への熱い思いと期待が高まる。早速、理研内のきのこ生息地を教えたりして、F氏のきのこ党への誘惑を試みる。
バカマツタケの発見
「コナラ林からキタマゴタケを採ったほかに、こんなきのこが生えていた」と、F氏から見せられたのが写真1のきのこである。
まさしく、小ぶりのマツタケであるが、松がないコナラ林に生えるマツタケであり、バカマツタケと推察した。
取りあえず、理研きのこ党OBのN氏(日本菌学会のフォーレでバカマツタケを採ったことのある)と、埼玉きのこ研究会・福島隆一会長に、写真1を転送し鑑定を依頼した。両氏とも間違いなくバカマツタケであるとの返事である。
バカマツタケ発見は未公表
きのこ狂は、身近な研究所内にバカマツタケが生えるのを知って、興奮のあまり、F氏にマツタケの臭いを嗅いだかどうか、食したかどうかも聞かなかった。
F氏に、写真のキノコはバカマツタケ間違いなしを伝えると同時に、研究所のニュースに、バカマツタケ発見について投稿するよう督促した。
残念ながら、林が荒れバカマツタケが絶滅する危険性があるので、公表しない方がよいと、バカマツタケ発見記の投稿には消極的であった。
バカマツタケの再発見
F氏が理研から他の研究機関に移動して以来、理研内のキノコ観察に余念がなかったが、秘かにバカマツタケの再発見に望みをかけていた。
なんと、3年目の夕刻(2014年9月12日の午後4時半過ぎ)、コナラ林に忽然とバカマツタケが顔を出しているではないか!(写真2)
奇妙なバカマツタケの確認
やぶ蚊に刺されながら、キノコを掘り出したところ、柄の下部がカブラ状の白い菌塊で膨らんだ奇妙なキノコである。バカマツタケと推察するも(きのこ狂は臭覚にまったく自信がない)、取りあえずマツタケの香りがあるかどうか第三者に確認してもらうことにした。
早速、ビアガーデン開宴準備中の調理人に嗅いでもらったところ、間違いなくマツタケの香りがするとのこと。次いで、冬虫夏草の専門家である内山 茂研究員に見せたところ、強いマツタケ臭があり、カブラマツタケ様のバカマツタケのようだとの言。 福島隆一会長に奇妙なバカマツタケの発見を知らせ、数日後に野外観察会があるので、大久保会員を介して奇妙なバカマツタケを届けてもらうことにした。
居酒屋に持ち込む
ビアガーデンの帰途、居酒屋にバカマツタケを持ち込み、有頂天になってマツタケ談義で盃を重ねる。
居酒屋のマスターが、バカマツタケに強い関心をもち、店の営業停止の危険性を省みず、初物のマツタケを調理しようと言う。
バカマツタケに間違いないが、カブラ状に膨らんだ菌塊がなんとなく気にかかる。迷いながら、菌塊を残し3本のうち2本をマツタケの吸い物に供することにした。居合わせた飲み客も、マツタケの吸い物に大喜び。
菌寄生菌
一安心して帰宅してパソコンを覗いて驚いた。内山研究員から、“カブラマツタケは他の Amanitaなどのキノコに寄生する菌寄生菌とする情報もあり、他にも別のキノコに寄生するキノコもあります。”との知らせである。
この知らせで、バカマツタケの生えた場所にキタマゴタケが生えていたことに気が付いた。もしかすると、根元がカブラ状の菌塊を有する奇妙なバカマツタケは、「キタマゴタケに寄生した結果ではないかと?」と想像した。
一方、数メートル離れた場所に、猛毒のタマゴタケモドキなどテングタケ科のキノコが生えていたことを思い出した。もし、このタマゴタケモドキにバカマツタケが寄生していた場合を想像すると、「前夜の居酒屋でのマツタケの吸い物は、危険性があり無謀であった!」と反省するのみである。
「自然の博物館」への寄託
奇妙なバカマツタケは、仮称「カブラマツタケ様バカマツタケ」として埼玉県立自然の博物館に寄託されることになった。
後日、寄託されたバカマツタケの菌塊をDNA鑑定して、奇妙なバカマツタケがキタマゴタケに菌寄生した結果であるかどうかを確かめる予定である。
会員諸氏からの菌寄生菌に関する情報を期待して、報告を終えます。
バカマツタケ Tricholoma bakamatsutake Hongo
マツタケに似るが、やや小ぶりで、秋早くから広葉樹林(コナラ、ミズナラ、ウバメガシ等の樹下)に生える。香りはマツタケに似て、さらに強い。時期外れに、しかも雑木林に出るので、おバカな?マツタケ?の名で呼ばれるようになってしまったが、香りも味も風味も、本家マツタケに一歩もひけを取らない。ニユ−ギニアにも産すると言うが、本邦特産に近い種で、埼玉県内だけでなく全国的にも絶滅が心配される希少種である。
バカマツタケ映像
写真1―最初に出現したバカマツタケ

写真2―再度出現したバカマツタケ(仮称―カブラマツタケ様バカマツタケ)
(於:理化学研究所構内)
2015